突然訪れたお姉さんは、涙を流すだけで、なにも話そうとはしませんでした。着飾っていたので、身内の不幸ではないことはわかりました。
大変かわいがっていた猫が死んだのかななどと想像しながら、彼女が落ち着くのを待ちました。
”どうしたの?”、理由を聞いてみました。流れる涙は、減ってきてはいるものの、彼女の瞳には、とまどいがあふれていました。どうしても僕には告げなければならないことを彼女は言いに来たのでした。
彼女は僕から目をそらして、すこし乾いた唇をひらき、事実を告げました。”お見合いに行ってきたの”。
(つづく)